大学物理の独言

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運動方程式とその任意性

運動方程式は、力学の中で最も重要な公理といって良い。

ここで公理と言ったのは、運動方程式が別の法則などから論理的に導き出されたものではなく、「どうやらそうなっているらしい」というように実験的に求められた公式だからである。

 

しかし、このことから「運動方程式は証拠が何もない」とするのは誤りである。

運動方程式によって導かれた運動の様子やエネルギー保存則などの法則が実際の現象をよく表していることが、運動方程式が正しいものであることを裏付ける。

 

今回は、そんな運動方程式について学んでいく。

 

 

運動方程式は、よく知られているように

{\displaystyle m\frac{d^2\overrightarrow{r}}{dt^2} = \overrightarrow{F} }

と書き表される。ここで、{m, r, F}はそれぞれ物体の質量、座標、かかる力である。

より正確には、{v}を物体の速度として

{\displaystyle \frac{d}{dt} m \overrightarrow{v} =m\frac{d^2\overrightarrow{r}}{dt^2} + \overrightarrow{v} \frac{dm}{dt}= \overrightarrow{F}}

であるが、質量が一定、つまり{m}微分した値が0となる場合を考えることがほとんどであるため、とりあえずは前者で覚えて問題ないだろう。

なお、{m \overrightarrow{v}}は物体の運動量と呼ばれ、系の各成分の運動量は外力がなければ一定となることが知られている(運動量保存則)が、これは別の機会に扱うことにする。

 

 

さて、運動方程式をさらに詳しくみていこう。

上で見た形を変形すれば、運動方程式は次のように書ける

{\displaystyle \frac{d^2\overrightarrow{r}}{dt^2}=\frac{\overrightarrow{F}}{m}}

 

これを計算して{\overrightarrow{v}}({=\frac{d\overrightarrow{r}}{dt}})を求めると、両辺の積分の計算をすることになるから、積分定数が一つ出てくることになる。これを{\overrightarrow{A}}とおく。

さらに計算して{\overrightarrow{r}}を求めれば、これもまた両辺の積分の計算になるから、{\overrightarrow{v}}を求めた時に出てきた積分定数に加えて、さらにもう一つの積分定数が現れる。これを{\overrightarrow{B}}とおく。

 

つまり、運動方程式から時刻{t}の時の座標を求めると、{\overrightarrow{A}}{\overrightarrow{B}}という二つの積分定数を含んだ結果が得られることになる。

 

{\overrightarrow{A}}{\overrightarrow{B}}はどちらも積分定数であるから、定数であればどのような値を入力しても運動方程式を満たし、それらは時刻0における速度と座標を考えることで決定される。

すなわち、考えている運動の初めの速度と座標に関する情報がなければ、任意の時刻での運動の様子がわからないことになる。

 

逆に考えると、同じ運動方程式でも、初めの速度と座標を変えれば別の結果を導くことができる。

このことは、座標のとり方を計算がしやすいようある程度自由に変えてよいことを示している。

初めの座標が原点にあった方が都合が良いのであればそのように決めてよいし、座標をある速度で移動するようなものと捉えてもよい。

ただし、都合の良い座標で運動を考える上で、少々の注意を要する場合もある。

これについては別の記事で書くことにしよう。