角運動量保存則と面積速度一定の法則
と の外積は として計算される。
この大きさを調べてみると、実は と がなす角を として が外積の絶対値になるのである。
これはつまり、外積の絶対値が下の図で着色された平行四辺形の面積に等しいということを意味している。
当然、 や が大きければ、この面積も大きくなる。
この面積の大きさを運動の様子を表す指標に利用できないだろうか?
例えば、図で の左端に座標の原点を置けば、 は矢印の先端を表す位置ベクトル になる。
をそこにある質点の運動量ベクトル として考えたら、 は となる。
今回はこれの性質について考えていこう。
運動方程式から考えていく。
質量 の質点が の力を受けているとすると、運動方程式は
となる。
両辺に左から質点の位置ベクトルを外積の形でかけてみると
右辺は、質点が受ける力のモーメントであるから、今後は と表記することにする。
左辺をもう少し変形したい。
の微分は
となるが、一般のベクトル で となる(これは同じ方向を向くふたつのベクトルがなす角が0となるから自明であろう)から、右辺の第一項は消える。
そのため
となる。
これを運動方程式に をかけた式に代入すれば、
となるのである。
質点の運動量 を用いれば
である。
左辺にある は角運動量と呼ばれ、よく で表される。
この式の意味を少し考えてみよう。
であった場合、 の一階微分が になるのだから、受ける力のモーメントが という環境においては が一定となり、大きさも向きも保存することがわかる。
という関係にあるのは先ほど定義した通りだが、力のモーメントが になるというのはなにも だとか にならなければならないというわけではない。
もちろんそれらによっても となるのだが、それ以外にも と の向きが平行であれば充分これを満たすのである。
そのような状況の一例が、太陽の周りを回る惑星や小惑星の運動であろう。
太陽の位置が原点となる座標を考えた時、惑星の位置ベクトルに対して万有引力は平行で逆向きとなるから、惑星の受ける力のモーメントは である。
よって、惑星や小惑星の運動というのは、別の惑星・小惑星との引力を無視すれば角運動量が保存することになる。
余談だが、惑星の公転運動には面積速度一定の法則というものがある。
面積速度というのは、下の図に示すような位置ベクトルと速度ベクトルからなる三角形のことを言うが、この法則によるとこの面積は惑星が移動しても常に一定になるというのである。
面積速度は、図を見ればわかるように である。
先程までの議論を思い出してほしい。
この惑星には恒星からの万有引力しか働いておらず、この力は と平行なのだから、角運動量保存則によって が一定となる。
惑星の質量は一定と考えてよいのだから、当然 が保存することになる。
すると、この外積の絶対値は であるから、 があるかないかというだけで面積速度とよく一致しているのである。
このことから、免責速度一定の法則が成立することがわかる