正準変換・ラグランジアンの任意性
作用 は、ラグランジアン を用いて
と表される。
実は、この変分 が 0 になるようなラグランジアンにはある程度の任意性がある。
これまでによく考えてきたような運動エネルギーとポテンシャルの差で表されるラグランジアンを として、
というのを考えてみよう。
というのは、座標と時間を変数に持つ任意の関数である。
こうすると、作用の変分は
となり、第一項は当然 0 になるし、積分の外にでた に関する項は、端点条件から なので、これもまた 0 になる。
よって、このような の一階微分がラグランジアンに加えられても、結局は同じラグランジアンと言ってしまっていいのである。
今回はこのような性質を用いて、ハミルトニアンの座標変換を行なってみる。
もとの座標上で だったハミルトニアンに対し、座標変換後のハミルトニアンを としよう。
ハミルトニアン は
と定義されるから、逆にラグランジアンは
と書ける。
よって、ハミルトニアンを用いれば、作用は
と表せる。
同様に、座標変換後の変数を用いれば、同じ作用が
とも書ける。
ラグランジアンに関して最初に説明した性質を用いてもう少し書き換えてみると、座標の任意関数 を用いて
としてしまってもこれらはすべて同じのはずである。
同じなのだから、当然
となり
という関係がわかる。
の時間微分についてもう少し扱いやすい形に書き直せば
となるから、これを先ほどの式に代入すると
任意の に対してこれが成り立つから
が言える。
運用を想像してくれればわかるだろうが、これは を先に決定しなければ座標変換先の変数がわからず、「この座標系に変換したい」という発想で を選ぶことはできない。
を決めてそれを計算してみるまで座標変換後がどのような座標系かはわからないが、それでもとりあえず座標変換がこれで行えるのである。
ちなみに、当然のことではあるが は と の関数だから、(1)と(2)によって と が と によってどう表されるかを調べてから、最終的に(3)に代入する必要がある。
この変換で重要な役割を果たす は、 と を生み出す関数ということで母関数と呼ばれる。
また、母関数を用いて座標変換するこの操作を正準変換という。
ここまでの議論による正準変換は母関数が の関数の場合にしか適用できないのだが、別の変数を持つ母関数もあった方が便利だ。
実は、旧座標の変数と新座標の変数をそれぞれひとつずつもった関数であれば、同様に母関数にしてしまうことができる。
の関数である母関数を と書くことにして、それをもとにルジャンドル変換によって変数がべつの組の場合も考えてみよう。
まず、 を考える。
とルジャンドル変換を定義すれば、
という変形ができるため、 を用いた正準変換は
となる。
同じように操作してやると、母関数 が や の場合も含め、全ての母関数において
がわかる。
さきほどルジャンドル変換を定義したとき、 の定義の右辺の符号が正準変換について書いたときと逆になっていることを疑問に思ったかもしれないが、これは許される操作である。
右辺の符号を変えれば新座標の変数を旧座標の変数を用いて表したときにすべて符号が逆になるだけで、何ら問題は生じない。