エントロピー・熱力学第二法則
カルノーサイクルを例に考えた熱機関で得られた式からエントロピー を定義した。
今回は、エントロピーについてもう少し詳しくみていきたい。
まず、系全体のエントロピー というのは、系を 個の区間に区切ってその 番目の位置のエントロピーを とおけば
として表すことができる。
つまり、系全体のエントロピーは、系を構成するひとつひとつの場所のエントロピーの和で与えられる。
極端なことを言えば、 は宇宙全体で定義するべきだろう。
エントロピーが増大するだとか可逆変化では一定だとかというのは宇宙全体で考えたときの の話で、ひとつひとつの部分についての話ではない。
ある部分のみを見たらエントロピーが減少するような変化でも、宇宙全体で考えれば は一定になるか増加しているはずだ。
しかし、そこまで極端に視野を広げなくとも、変化が起きない部分はそもそもエントロピーが一定となっているから見る場所を制限しても問題ないという理屈である。
次に、エントロピーの変化量について見ておこう。
熱力学第一法則から導出されたように、受け取る熱量 というのは、エンタルピーを 、内部エネルギーを とおけば定圧変化では 、定積変化では として表される。
エントロピーの定義からその変化量が
と表されることを考えると、定圧変化でのエントロピー変化は
である。
エンタルピーが と表されることから で、定圧変化におけるエントロピーは
として計算されることになる。
モル熱容量というのは一般には温度によって変化するので、積分の外に出すことはできない。
定積変化の場合についても、考え方はあまり変わらない。
定積変化で なのだから、エンタルピーの変化は
となる。
より で、
によって計算することができる。
最後に、熱力学第二法則を紹介しておこう。
この法則の主張は、「熱は温度の高いものから低いものへ移動し、逆方向の移動は起こらない」という直感通りのもので、エントロピーから説明ができる。
下の図のような例で考えてみよう。
周囲を断熱材で覆われた容器が温度の異なるふたつの部屋(ROOM 1, ROOM 2)に区切られ、ROOM 1 から ROOM 2 にむけて の熱が移動するとする。
つまり、実際には が正であればROOM 1 から ROOM 2 へ熱が移動するし、負であれば ROOM 2 から ROOM 1 へ移動するわけである。
考えている熱量が微小なので、 の移動程度では両部屋の温度は変わらないと見てよい。
このとき、熱の移動が起こるのは両部屋間だけで外には一切影響しないので、エントロピーの変化を考えなければならないのは断熱材に覆われた内部だけということになる。
ROOM 1 の熱量の変化は だから、この部屋のエントロピーの変化は
で、同様に ROOM 2 の熱量の変化は だから
となる。
これらから、系全体のエントロピーの変化は
というように求まる。
エントロピーは減少しないのだから により
とならなければならず、熱力学第二法則が証明される。