連成振動
単純な単振動の運動方程式は難しく考えずとも解くことができるのだが、下の図のように取り付けられた質点が別のバネと質点の影響を受けるような場合には、少々面倒な計算過程を経ることになる。
とりあえず力の働き方を考えてみよう。
図の左の質点を質点1、右の質点を質点2と呼ぶこととし、3つのバネについても左から順にバネ1、バネ2、バネ3としておこう。
3つのバネが自然長となるときのふたつの質点の位置を原点とする座標軸をそれぞれ設定する。
考えればわかるだろうが、質点1はバネ1とバネ2から、質点2はバネ2とバネ3から弾性力を受けるのである。
また、バネ1の左端とバネ3の右端はそれぞれ壁につながっているとすると、バネ1が質点1に与える力は によって決定し、同様にバネ2が両質点に与える力は と によって、バネ3が質点2に与える力は によって決まる。
以上を考慮に入れて、運動方程式を作る。
今回はシンプルにするため、3つのバネのバネ定数はすべて 、質点はどちらも質量 とする。
ふたつの運動方程式は
となる。
これらを行列を用いてまとめて表すと
となるのだが、ここからは
と書くことにする。
さて、ここからは の固有値 と固有ベクトル を求める作業をする。
これらは何かというと、一言で言えば
という関係になるもののことである。
ここで求め方の説明をすると冗長になってしまうので、わからない人は「固有値 求め方」とでも検索してほしい。
とりあえず求め方さえわかれば、ここでは問題ない。
という二組が見つかる。
ふたつの固有ベクトルは独立なのだから となる が存在するはずで、これを運動方程式に代入すれば、 を用いて
となる。
式が煩雑になってしまったが、 を含む項、 を含む項でそれぞれまとめられるから、結局
というふたつの式が出来上がるのである。
ここで
という関係があったのを思い出すと、ふたつの式は
と書き換えられる。
こうなれば、残りの作業は簡単だ。
と の値を用いて
を計算して と の一般解を求め(求め方は単振動の運動方程式の解き方について書いた別の記事を参照してほしい)、それを
に代入すればよい。
今回の と を使用すれば
となるのだから、
である。
なお、 はいずれも定数で、初期条件によって決定される。
また、単振動の方程式の解を、紹介した解き方と異なって
としてしまったが、これの右辺はふたつの三角関数の定数倍を合成した形になっていて、「ふたつの特殊解の線形結合が一般解となる」を満たしているから問題ないのである。
もちろん、 を経由して求めても構わない。