2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧
ギブスエネルギー はエネルギーによる効果とエントロピーによる効果をどちらも考慮して圧力一定下の変化の方向を調べるための指標でとしてエンタルピー と温度 、エントロピー を用いて表現される。このことから、ギブスエネルギーの変化量 がと書かれること…
下の図のような状況を考えてみてほしい。容器の内部に気体が閉じ込められていることとし、内部のエントロピーは 、外部はエントロピーが で温度が とする。容器の内側へ熱量 が移動した場合、全体のエントロピー はどうなるだろうか。外部のエントロピーの微…
カルノーサイクルを例に考えた熱機関で得られた式からエントロピー を定義した。今回は、エントロピーについてもう少し詳しくみていきたい。まず、系全体のエントロピー というのは、系を 個の区間に区切ってその 番目の位置のエントロピーを とおけばとして…
熱機関と熱力学の発展は切っても切り離せない関係にあるので、カルノーサイクルというものについてここで扱っておきたい。カルノーサイクルというのは、下の図のように断熱変化と等温変化の繰り返しによってピストンを動かす熱機関である。サイクルの向きはA…
気体が受け取る熱量は、閉じ込められた気体の体積が一定となる場合は気体の内部エネルギーの変化と等しくなるし、圧力が一定となる場合はエンタルピーの変化と等しくなる。では、受け取る熱量を 0 にしてしまった場合には気体はどう変化するのだろうか。この…
熱力学第一法則から、熱容量について考えてみる。熱容量 というのは、ある熱量を受け取ったときに温度がどの程度変化するかというのを表す比例係数で、その定義はとなる。ここで、 は受け取った熱量、 は温度を表す。つまり、 の微分の形で表せばと表され、…
私が熱力学第一法則を高校で学んだとき、それを覚えるものとして指導された。その後いくつかの本を読んでも同じように暗記しなければならないかのように扱われていて、何人かの友人は「される仕事の場合は符号が...」などと苦労していたのだが、実際にはもっ…
下の図に示すような二重振り子の運動について考えたい。この運動を加速度と働く力からそれぞれに考えようとすると、現象が複雑すぎてとてもではないが運動方程式にたどり着けない。このとき、オイラー・ラグランジュ方程式が高い効果を発揮する。 まずはラグ…
正準変換により、座標を取り替えて運動を議論することができるようになる。今回はこの操作を用いて、物体とともに移動する座標系を考えてみたい。新しい座標系でのハミルトニアン は、座標変換前のハミルトニアン と母関数 を用いてと表せる。これによって …
作用 は、ラグランジアン を用いてと表される。実は、この変分 が 0 になるようなラグランジアンにはある程度の任意性がある。これまでによく考えてきたような運動エネルギーとポテンシャルの差で表されるラグランジアンを として、というのを考えてみよう。…
ハミルトニアン を用いた運動方程式である正準方程式は、座標を 、運動量を としてである。これはオイラー・ラグランジュ方程式と比べてシンプルだが、一方のみが右辺にマイナス記号を必要としていて、少々覚えづらいし両者の対称性が損なわれている。少しや…
解析力学の世界では、運動方程式にはいくつかの表現方法が存在する。そのひとつがラグランジアンを用いたオイラー・ラグランジュ方程式だが、今回紹介するのはハミルトニアンというのを用いた運動方程式である。こちらの方が、運動方程式の形がシンプルでわ…
エネルギー保存則だとか運動量保存則だとか、物理学では色々な物理量に関する保存則が存在する。保存量を見つければそれだけで現象の理解に役立つことは力学を学ぶ中で経験的に感じているだろうが、じつは、保存量を見つける方法というのが存在しているので…
これまでの力学は、運動の変化のしかたを表す式に初期条件や境界条件を代入することによって、細かく区切った時間ごとの様子を調べていくものだった。しかし、変分法を使えば、初めと終わりの条件を設定することによって様子を追うことができてしまうのであ…
運動方程式は物理学でも特に重要だが、色々な座標系で使うには少々面倒なのである。デカルト座標で考えるにはシンプルだが、極座標に変換すると遠心力だとかの項が出てくるから覚えるのが大変だし、それ以前に新しい座標での運動方程式の導出が手間である。…
マクスウェル方程式をいじると電磁波に関する波動方程式を導出できたが、電磁波について考えるにあたって今回は別の変形をしてみる。 のふたつの式に関して、(1)の両辺に磁束密度を、(2)の両辺に電場を内積の形でかけてみる。任意のベクトル に関してが成り…
単磁荷と呼ばれるようなN極だけ、またはS極だけしか持たないものは見つかっていない。磁石というのはN極の逆側には必ずS極があるし、円形の電流が作り出すような磁場に関しても、そのつくりだすベクトルを調べると電気双極子によるベクトルとよく似た形にな…
アンペールの法則の微分形について書いたときに、閉曲線 をふちとする曲面であれば、ストークスの定理で考える面 は綺麗な円や多角形であっても立体的に歪んだ面であっても問題ないということを書いた。しかし、普通はそれで問題なく計算できるのだが、少し…
ファラデーの電磁誘導の法則により、電気回路の中の磁束が変化すると回路に起電力が生じる。これは、回路に電流が流れることによって磁場が生じた場合にも同様である。回路に電流が流れるとそれによって磁場が生じ、その磁場によって回路自身に新たな起電力…
ビオ・サバールの法則やアンペールの法則は電流が生み出す磁場について記述するものだが、それとは逆に磁場によっても電流が発生する。より正確には、磁場の変化が電流を生み出す効果を持っている。 まず、重要な概念をひとつ紹介しておく。 をこれまで「磁…
アンペールの法則の記事で紹介したように、磁束密度 は任意の閉曲線 でを満たすことが知られているのだが、今回はもう少し正確に書き直しておこう。磁束密度を計算する上ではあまり意識せずともよいのだが、この法則の右辺は、大きさ 、向きが電流が流れる方…
電流が作る磁場をビオ・サバールの法則によって求められることは、別の記事で扱っている。この法則によって磁場を計算できる状況というのはかなり多くて汎用性が高い法則なのだが、もうひとつ、磁場を計算するのに役立つ法則がある。それが、アンペールの法…
磁場が運動する電荷に影響を及ぼすように、運動する電荷も磁場に対して変化を起こす能力を持っている。運動する電荷が磁場に影響するのであれば当然電流が磁場に影響を及ぼすということになるわけだが、電流が磁場に与える影響を記述する法則こそがビオ・サ…
電気現象と磁気現象が密接に関わっていることは今でこそ広く知られているものの、200年ほど前までは全くの無関係と考えられていたという。両者の関係性が見出されるきっかけとなったのは電流に対して磁針が反応する現象で、この現象を数式的に記述したのがア…
電場 はガウスの法則によってで求めることができるが、今回はこれを少しいじってみる。ここでは紹介程度にとどめるが、ガウスの定理とストークスの定理という、電磁気学において非常に重要な定理がふたつ存在する。一般のベクトル について、ガウスの定理に…
重力のポテンシャルを考えることができるのと同じように、当然静電気力にもポテンシャルを考えることができる。これは電位といった方が馴染みがあるだろうが、ようは力学で考えていたのと同じようにどれだけの仕事をする能力があるかを表すものである。静電…
点電荷が作る電場については、別の記事で書いたように、その電荷が作る電場の対称性を考えた上で等電場の閉曲面について面積分を行えばよい。点電荷や球に電荷が一様分布する場合以外でも、たとえば無限に長い半径 の円柱形の物体に電荷が分布していた場合に…
電荷が存在するところには、電場が発生する。つまり、我々の身の回りに溢れるあらゆるものは原子からできていて、その原子というのは陽子と電子を持っているのだから、この宇宙というのは電場に塗れた世界ということである。磁場というのも電場が存在してこ…
回るコマを見てなぜ倒れないのかを疑問に感じるというのは、多くの人が経験することだろう。感覚的にはおかしい挙動のように見える。しかし、角運動量と力のモーメントの関係から考えると、コマが倒れないというのは力学的に自然な現象なのである。 下の図の…