電磁波のエネルギー
マクスウェル方程式をいじると電磁波に関する波動方程式を導出できたが、電磁波について考えるにあたって今回は別の変形をしてみる。
のふたつの式に関して、(1)の両辺に磁束密度を、(2)の両辺に電場を内積の形でかけてみる。
任意のベクトル に関して
が成り立つことを利用して、 と の式の両辺の差を考えると
というように変形できるのである。
これは、電磁波のエネルギーに関する式となる。
というように書くことにし、ここからはこの式の意味を考えていく。
まず、右辺にある は、単位時間当たりに単位体積中の電荷が受ける仕事を表している。
電流の定義から遡り、電場を静電ポテンシャルを用いて表すとわかりやすいかもしれない。
と の意味を考えるにあたって、電磁波における電場と磁束密度の関係を用いて少し式変形をしておこう。
電磁波の場合、光速を とおけば
という関係にあることが波動方程式の導出過程からわかる。
これを用いて と を変形する。
電磁波の場合は電場と磁場の発生する向きが垂直なのだから となることを用いると
となるのである。
見ると、 の大きさは の光速倍になっている。
どういうことかというと、 というのはエネルギーの密度を、 はエネルギーの流れを表しているのである。
電磁波というのは、光速でエネルギーを伝達している。
だから、次の図に示すように、電磁波の進行と垂直な単位面積を単位時間当たりに通過するエネルギーの総量というのは、単位体積中のエネルギーの光速倍、つまり になるわけである。
のことをポインティングベクトル(Poynting vector)というが、このような意味から Pointing vector と勘違いしてしまうことが多い。
ただ、Poynting というのはこのベクトルを発見した人の名前であって、指し示すという意味の Pointing とは無関係である。
さて、ここまでを理解してもらった上で、先ほどの式をもう一度見てみよう。
という式は、ポインティングベクトルの発散(出ていくエネルギー)とエネルギー密度の時間変化の和が、電荷が電場に対してする仕事に等しいことを表す。
つまり、右辺は電荷によるエネルギーの供給なわけだから、これは一種のエネルギー保存則であると言える。