ポアソン括弧
ハミルトニアン を用いた運動方程式である正準方程式は、座標を 、運動量を として
である。
これはオイラー・ラグランジュ方程式と比べてシンプルだが、一方のみが右辺にマイナス記号を必要としていて、少々覚えづらいし両者の対称性が損なわれている。
少しやりづらくないだろうか。
座標と運動量、時刻を変数とする一般の関数 を考える。
と表せる。
この に座標 や運動量 を代入した場合
となるのだから、当然のことながら正準方程式と同じように
という結果になる。
一般の物理量 に関して
として定義される をポアソン括弧と呼ぶのだが、ポアソン括弧を用いると
となって、正準方程式を符号に関して注意する必要のない方法で表せるのである。
ちなみに、 をクロネッカーのデルタ( のとき 、その他の場合 となる記号)として
という関係が成り立ち、これらはまとめて基本ポアソン括弧式と呼ばれる。
ポアソン括弧には他にもいくつか性質があるから、 を任意の物理量として列挙しておく。
反対称性
双線型性
ヤコビ恒等式
いずれも定義から考えれば理解できるはずである。
次に、 が保存量であるとしてポアソン括弧で少し遊んでみる。
これらが保存量であれば も も 0 で
となる。
ヤコビ恒等式から
となるのだが、 と が保存量だから、左辺にあるふたつのポアソン括弧はどちらも 0 になる。
よって
ということになり、 が保存量ということがわかるのである。
これは、新しい保存量を見つける手がかりとなりうる。