大学物理の独言

物理学に関連して自分が学んだことを不定期で書いていきます。依頼や要望、ご指摘等はコメントまで

物理学における次元

今回考える次元とは、4次元ポケットだとか、宇宙は11次元でできているだとかで言う次ものとは別物である。

 

ここでの次元とは、単位の一種だと考えてよい。

といっても、我々が小学生の頃からよく知っているような、長さを表すものだけでも[mm] [cm] [m] [km] ... というように多くの表し方がある覚えきれないような類のものではなく、次元を構成する概念はたったの3つ、[質量] [長さ] [時間]のみである。

より書きやすくするため、これらはそれぞれ[M], [L], [T] というように表現される。

 

物理学に登場するあらゆる量(これを物理量という)は、すべてこれらの3種類の組み合わせによって表される。

例えば、力というのは[MLT{^{-2}}]として表される。これは、力が質量と長さをかけたものから時間の二乗でわった量として計算されるものであるということを意味する。

一方で、円周率 {\pi}{sin \theta} など、次元が1となるような量も存在する。これは、強調して書けば次元が[M{^0}L{^0}T{^0}]になるものである。

 

次元には、次のような性質がある

  1. 異なる次元を持つ量は、足す・引く の操作ができない(掛ける・割る の操作はできる)
  2. 等式や不等式の左辺と右辺は、必ず同じ次元になる
  3. いかなる場合でも、同じ性質の物理量(例えば「力」)は同じ次元になる

 

1. は、感覚的に理解できるであろう。例えば、身長170cm 、体重60kg の人がいたとして、この身長と体重を足した値には全く価値がないのと同様である。

また、2. についても、1. を考えればすぐに理解できる。

 

3. は少し不思議に感じるかもしれないが、1. と2. を考えればそうならざるを得ないことは理解できるだろう。

例えば、力学に登場する力も電磁気学に登場する力も、運動方程式で右辺におけば左辺は[質量]×[加速度] なのだから、当然同じ次元を持っているはずである。

 

これらの性質を知ると、力が[MLT{^{-2}}]という次元を持つことが理解できるようになる。

運動方程式は、先述したように

{\displaystyle{ma=F}}

 として表される。ここで、{m, a, F} はそれぞれ質量、加速度、力である。

速度 {v} は、座標 {x} と時間 {t} を用いて

{\displaystyle{v=}\frac{dx}{dt}=\lim_{\delta{t} \to 0}\frac{x(t+\delta{t})-x(t)}{\delta{t}}}

と表されるから、速度の次元は[LT{^{-1}}]である。

加速度{a}

 {\displaystyle {a=} \frac{d^2x}{dt^2} = \frac{dv}{dt} = \lim_{\delta{t} \to 0} \frac{v(t+\delta{t})-v(t)}{\delta{t}}}

として表される量であるから、{a}は[LT{^{-2}}]の次元を持つ。

以上から、運動方程式の左辺は[MLT{^{-2}}]の次元を持ち、性質2. により力の次元が理解できる。

 

 さて、長々と話してきたが、物理量の次元を知ると何が嬉しいのだろうか。

 

実は、この考え方は問題を解く際の計算ミスを減らすのに非常に有効である。

上で力の次元を調べるのに使った方法を応用すれば、様々な定数の次元を調べることができる。

それらの量を組み合わせて作られた物理量も当然3つの性質を満たすはずであるから、例えば

{\displaystyle {F=} \frac{abcd}{efgh} }

として力が求められた時に、{\frac{abcd}{efgh} } の次元が[MLT{^{-2}}]となっていなければ計算ミスをしていることになるのである。

 

このことを知っていると、試験などでの減点を減らすことができる。

 

また、そのほかにも、ある物理量の式の形を考える時に、使用することになるであろう別の物理量からある結果をおおまかに推測することができるようになる。

これについては機会があれば別で述べるが、バネに取り付けられた質点の角振動数は、バネ定数の次元を考えるとある程度の推測が可能であるから試してみてほしい。