大学物理の独言

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回転の運動エネルギー

剛体が回転する時の運動方程式については別の記事で扱っているが、もう一つ考えられると便利なのは回転している物体が持つエネルギーである。

強く回転させたボールを真下に落下させると鋭く横方向に跳ねることからもわかるように、回転の運動エネルギーというのも当然存在するわけで、これの導出はそう難しいものではない。

運動方程式の時よりもサクッと導出ができる。

 

さて、並進運動の運動エネルギーを {T_{tra}} とおけば、

{\displaystyle T_{tra} = \frac{1}{2} m v^2}

と表されるのはご存知の通りである。

回転の運動エネルギーの導出は、ここを出発点とする。

剛体を構成する {n} 個の質点のうち、{i} 番目のものが持つ運動エネルギーを {T_i} とおけば、先ほどと同様に

{\displaystyle T_i = \frac{1}{2} m_i v_i^2}

となる。

回転軸を原点にした時、回転の角速度を {\omega}{i} 番目の質点の回転軸からの距離を {r_i} とおけば、これらは

{\displaystyle v_i = r_i \omega}

という関係にある。

これを {T_i} に代入すれば

{\displaystyle T_i = \frac{1}{2} m_i r_i^2 \omega^2}

となるのだから、{n} 個の質点全てについて足せば、

{\displaystyle \sum^{n}_{i} T_i = \frac{1}{2} \omega^2 \sum^{n}_{i} m_i r_i^2}

となる。

左辺が回転する剛体の運動エネルギーを指しているのは見ての通りだ。

右辺の {\sum m_i r_i^2} に注目してほしい。

これは、剛体の慣性モーメントである(詳しくは回転の運動方程式についての記事を参照してほしい)から、以降でもこれを {I} とおくことにする。

すると、回転の総運動エネルギーを {T_{rot} } とおけば

{\displaystyle T_{rot} = \frac{1}{2} I \omega^2}

となる。

{\frac{d \theta}{dt} = \omega} となる {\theta} を考えれば、{\theta} は回転した角度になるが、{T_{rot} }

{\displaystyle T_{rot} = \frac{1}{2} I \left( \frac{d \theta}{dt} \right)^2}

と表せる。

よって、剛体が持つ運動エネルギー {K} は並進運動の運動エネルギーと回転運動の運動エネルギーの和だから、

{\displaystyle K = \frac{1}{2} m \left( \frac{dr}{dt} \right)^2 + \frac{1}{2} I \left( \frac{d\theta}{dt} \right)^2 }

となる。

2種類の運動エネルギーを比較してみてほしい。

質量 {m} と慣性モーメント {I} が、座標 {r} と角度 {\theta} がそれぞれ対応関係にあるように見える。

また、この対応関係は両者の運動方程式からも読み取れる(もっとも、それぞれの次元は対応していない)。